「バリアフリーリフォームは効果があるの?」
「バリアフリーリフォームは高額なイメージ…」
「バリアフリーリフォームの施工業者はどうやって選ぶ?」
国民生活センターの発表によると、65歳以上の高齢者の事故は77.1%が住宅内で発生しています。
これから親の介護を控えている方の中には、自宅の安全性を見直す必要性を感じる方も多いでしょう。
そこで本記事では、バリアフリーリフォームが必要な人の特徴や施工のメリットを解説します。
また、工事内容ごとの費用相場や上手な依頼方法についても紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。
参照:医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故|国民生活センター
目次
バリアフリーリフォームが必要な人の特徴
バリアフリーリフォームは、高齢者や要介護者にとって転倒事故を防ぐための重要な対策です。
とくにこれから解説する4つは、家庭内事故の主な原因となるため、日常動作に不便を感じた時点で早期に検討することが大切です。
1.玄関の段差でよくつまずく
玄関の小さな段差でつまずく経験が増えたら、バリアフリーリフォームを検討すべきタイミングです。
わずか数センチの段差でも、足の筋力が低下した高齢者にとっては転倒の大きな原因となります。
たとえば、スロープや手すりを設置することで、毎日の出入りが格段に楽になるでしょう。
高齢化に備えて早めに玄関の段差問題を解消しておけば、将来的な転倒事故のリスクを大きく抑えることが可能です。
2.階段の上り下りがつらく感じる
階段の上り下りに負担を感じるようになったら、膝や腰への負担が増大しているサインです。同時に転倒事故のリスクも高まっています。
たとえば、手すりの設置や階段昇降機を導入するバリアフリーリフォームを実施することで、移動時の身体への負担を大きく軽減できます。
また、最近では2階建て住宅を1階だけで生活できるように、間取りを変更する平屋化リフォームを選択する方も増えています。
階段での転倒は重大な骨折につながる可能性が高いため、早めの対策が重要です。
3.浴室の床で滑って転びそうになる
浴室での転倒事故は、打撲や骨折だけではなく、熱い湯によるやけどや溺水などの二次災害につながります。
濡れた床面は非常に滑りやすく、高齢者にとっては命に関わる危険があります。
たとえば、滑りにくい床材への変更や手すりの設置により、入浴時の安全性を高めることが可能です。
これらの工事は介護保険の住宅改修費制度の対象となる場合もあるため、自己負担を抑えて、早期の対策が推奨されています。
4.将来的に車椅子や介護が必要である
将来的に車椅子や介護が必要になる可能性がある場合、早めに住宅のバリアフリーリフォームをしておくことが効果的と言えます。
介護が始まってから慌てて工事するよりも、余裕のあるうちに計画的に進めた方が、費用面でも精神面でも負担が少なくなるためです。
たとえば、玄関の出入口の幅を広げたり、廊下の横幅を確保したりすることで、介護する側の動きがスムーズになり介護の質も向上するでしょう。
ケアマネージャーや建築士と連携して計画を立てることで、効果的なリフォームが実現できます。
バリアフリーリフォームを施工するメリット
バリアフリーリフォームには、家庭内の事故予防と生活の自立支援という大きなメリットがあります。
また、介護する側とされる側の両方の負担を軽減し、精神的な安心感も得られます。
さらに国や自治体の補助金制度を活用することで、費用を抑えた施工が可能になります。
1.家庭内での事故を予防できる
バリアフリーリフォームの最大のメリットは、家庭内での転倒や骨折のリスクを抑えられることです。
厚生労働省の人口動態統計によると、家庭における不慮の事故で亡くなった人は約16,000名で、そのうちの約9割が65歳以上の高齢者でした。
たとえば、浴室の床材を滑り止め付きのものに変更したり、玄関の段差を解消したりといった改善を行うことで、事故発生率を大幅に下げられます。
とくに夜間のトイレ移動や入浴時など、危険性の高い場面での安全性が向上し、高齢者も家族も安心して生活できるようになります。
参照:令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省
2.介護する側と介護される側の両方が安心できる
介助動線を改善することで、介護する側の負担が大きく軽減されます。
在宅介護を継続するためには、介護する側のストレスをどれだけ減らすことができるのかが重要です。
たとえば、介護しやすい高さに調整された洗面台やトイレを設置することで、腰への負担が軽減され、毎日の介助作業が格段に楽になります。
同時に、介護される側も自分でできることが増えるため、自尊心を保ちながら生活の質を維持できます。
双方にとって快適な環境を整えることが、長期的な在宅介護の成功につながるのです。
3.国や地方自治体の補助金・助成金制度を活用できる
バリアフリーリフォームには、国の介護保険住宅改修費支給制度が活用でき、最大18万円まで支給されます。
さらに各自治体が独自の助成制度を設けている場合もあり、これらを併用することで自己負担を大幅に軽減できます。
ただし、補助金の対象となる工事内容や申請手続きには細かい要件があるため、事前に確認することが重要です。
また、施工業者に補助金対応の実績があるか確認し、申請サポートを受けられる業者を選ぶと安心です。
バリアフリーリフォームに関する補助金・助成金・減税制度の詳細や申請時の注意点については、こちらのページを参考にしてください。

バリアフリーリフォームの工事内容と費用
バリアフリーリフォームは、施工箇所によって費用・工期・補助金の対象範囲が異なります。
利用頻度の高い箇所を優先的に改修することで、限られた予算でも効果的な住環境改善が可能です
ここでは住宅を7つに分けて、バリアフリーリフォームの事例と費用相場を紹介します。
1.玄関のバリアフリーリフォーム事例と費用相場
玄関のバリアフリーリフォームは、日常の外出時における安全性を高めるために優先度の高い工事です。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
スロープ設置 | 段差を解消し車椅子対応に | 約10〜30万円 |
手すり設置 | 上り下り時の安全確保 | 約2〜5万円 |
引き戸交換 | 開閉しやすく出入りを快適に | 約15〜25万円 |
また、車椅子利用を想定する場合はスロープ勾配を緩やかに設計する必要があり、費用が上がる傾向があります。
毎日使う玄関の段差を解消することで、転倒事故の確率を低減させられるだけではなく、外出への心理的なハードルも下がります。
2.廊下・階段のバリアフリーリフォーム事例と費用相場
廊下や階段は、住宅の転倒事故の中で最も重症化するリスクが高いエリアの一つです。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
手すり設置 | 転倒予防・歩行補助 | 約3〜8万円 |
階段昇降機 | 階段移動をサポート | 約40〜100万円 |
段差解消 | 車椅子移動を容易に | 約10〜20万円 |
階段の上り下りが困難な場合は、階段昇降機の設置も選択肢となります。
また、廊下幅を広げる工事は大がかりになりますが、将来的な介護のしやすさを考えると検討価値があります。
3.トイレのバリアフリーリフォーム事例と費用相場
トイレは1日に何度も使用する場所であり、バリアフリー化の優先度が高い箇所です。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
手すり設置 | 立ち座りの補助 | 約3万円〜 |
洋式化工事 | 膝・腰への負担軽減 | 約15〜75万円 |
引き戸変更 | 車椅子でも出入りしやすく | 約10万円前後 |
トイレのバリアフリーリフォームに洋式化工事はほぼ必須条件といいってもよいでしょう。また、引き戸への変更や手すりの設置によって、介護する側の負担も軽減しやすくなります。
トイレのリフォームは、介護保険の住宅改修費制度が活用できる場合も多く、自己負担を抑えられます。

4.浴室のバリアフリーリフォーム事例と費用相場
浴室は、滑りやすい床や段差が原因で、住宅内事故が最も多い場所の一つです。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
浴槽段差解消 | またぎやすく安全に | 約15〜25万円 |
滑りにくい床材 | 転倒リスクを軽減 | 約10万円前後 |
手すり・椅子設置 | 入浴時の安定性向上 | 約5万円〜 |
ユニットバス交換 | 総合的な安全確保 | 約80〜150万円 |
浴室自体が経年劣化して古くなっている場合は、ユニットバスの交換工事を検討することがおすすめです。
また、リフォームしてから期間が経っていなく設備が新しい場合でも、介護する側の動線も意識した設計に変更する部分的なリフォームが効果的です。

5.洗面所・脱衣所のバリアフリーリフォーム事例と費用相場
洗面所や脱衣所は、身支度や入浴の準備をする重要な空間です。介護では最も重労働となる作業の一つであり、開放的な空間づくりと適切な場所に補助器具があることがポイントとなります。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
洗面台高さ調整 | 使いやすい高さへ変更 | 約5〜15万円 |
段差解消 | 出入りをスムーズに | 約5万円前後 |
滑り止め床材 | 転倒防止 | 約3〜8万円 |
車椅子利用を想定する場合は、洗面台下に膝スペースを設ける設計が有効です。
介護される側の状況に合わせてリフォームすることで、介護する側の負担も大きく低減します。
6.キッチンのバリアフリーリフォーム事例と費用相場
キッチンのバリアフリー化は、自立した生活の維持に直結します。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
高さ調整式キッチン | 車椅子対応・作業性向上 | 約60〜120万円 |
床段差解消 | 安全な動線づくり | 約10万円前後 |
間取り拡張 | 介助・移動スペース確保 | 約30万円〜 |
高さ調整が可能なシステムキッチンへの交換は高額となりやすいですが、車椅子でも調理しやすくなります。
座ったまま作業できる設計にすることで、長時間の立ち仕事による負担を軽減し、料理を楽しめる環境が整います。
7.寝室・リビングのバリアフリーリフォーム事例と費用相場
寝室やリビングは、一日の中で最も長時間過ごす空間であり、とくに快適性が重要です。
リフォーム内容ごとの費用相場については、以下の表を参考にしてください。
工事項目 | 内容 | 費用相場 |
---|---|---|
床段差解消 | つまずき防止 | 約10万円〜 |
引き戸変更 | 開閉負担を軽減 | 約10〜15万円 |
ベッドスペース確保 | 介護動線を最適化 | 約5万円〜 |
とくに将来的に介護ベッドの導入を検討している方は、設置するスペースを確保する工事の施工をおすすめしています。
また、将来的に1階だけで生活できるよう、寝室を1階に移動する間取り変更を検討する方も増えています。
バリアフリーリフォームを上手に依頼するためのポイント
バリアフリーリフォームを成功させるには、優先順位と予算配分を事前に明確にすることが重要です。
将来の介護動線を想定した設計を行い、補助金申請を見据えて早期に相談を始めましょう。
以下のポイントを抑えて計画的に進めることで、費用を抑えながら効果的なリフォームが可能です。
1.予算と優先順位から施工箇所を絞る
限られた予算で最大の効果を得るには、全面改修よりも要所を重点的に改善する方が効果的な場合があります。
とくに補助金の適用範囲を意識しながら計画を立てることで、自己負担を最小限に抑えられます。
例えば、転倒リスクの高い浴室や階段を優先し、その後で他の箇所を段階的に改修する方法もあります。
事前にケアマネージャーと相談し、現在の身体状況や今後予想される変化を考慮して優先度を明確化しましょう。
2.日常生活を1階で暮らせる設計にする
階段の移動を減らすことは、転倒事故の防止に直結します。寝室・トイレ・浴室を同じフロアに配置することで、日常生活がスムーズになり安全性も高まります。
ただし、1階に水回りを新設する場合は、配管工事が必要になるため費用が高額になる可能性があります。
既存の間取りを活かしながら、できるだけ効率的な動線を確保する設計が理想です。
日常生活を1階で暮らせる設計にしておけば、将来的に介護が必要になった際も、介護する側の負担が軽減され、在宅介護を継続しやすい環境が整います。
3.工事計画は早めに立てる
バリアフリーリフォームでは、補助金申請に事前の手続きが必要な場合が一般的です。
実際に、介護保険の住宅改修費は、工事前に申請が必要なケースがほとんどです。
そのため、設計から見積もり、補助金申請までに合計1〜2か月かかることも珍しくありません。
早めに専門業者やケアマネージャーに相談し、必要な書類や手続きの流れを確認しておくことで、スムーズな施工が実現できます。
理想は介護が実際に始まる前に施工を完了しておくことであるため、余裕を持った計画が重要です。
バリアフリーリフォームに関するよくある質問
バリアフリーリフォームを検討する際には、業者選びや工事中の生活、工期について疑問を持つ方が多くいます。
ここでは、それらのよくある質問について回答していきます。
1.バリアフリーリフォームの施工業者選びのポイントは?
信頼できる業者を選ぶには、まず建設業許可や福祉住環境コーディネーターの資格を持っているかを確認しましょう。
介護リフォームの実績が豊富な業者は、利用者の身体状況に応じた適切な提案ができます。
また、見積もりの内訳が明確で、補助金申請のサポート体制が整っているかも重要なポイントです。
口コミや施工事例を参考にしながら、親身に相談に乗ってくれる業者を選ぶことが、満足度の高いリフォームにつながります。
複数の業者から見積もりを取り、工事内容と費用を比較検討することをおすすめします。
2.バリアフリーリフォームの施工中はどこで生活する?
施工箇所によっては、仮設トイレや簡易浴室を設置して自宅で生活を続けることが可能です。
また、工事を複数回に分けて実施する分割施工も有効な選択肢です。
たとえば、まず浴室を改修し、次にトイレや玄関といった具合に段階的に進めることで、生活への影響を最小限に抑えられます。
一方で、一時的に親族宅やホテルに滞在することが可能であれば、複数個所を一気にリフォームすることがおすすめです。
事前に家族やケアマネージャーと工事期間中の生活計画を調整し、無理のないスケジュールを組むことが大切です。
3.バリアフリーリフォームの工期の目安は?
工事内容によって工期は大きく異なります。手すりの設置のような小規模な工事は1〜2日で完了し、浴室の改修は約1週間前後が一般的です。
複数箇所を含む全面的なバリアフリーリフォームでは、2〜3週間程度かかることもあります。
ただし、補助金の申請手続きを含めると、着工前後で1か月程度の余裕を見ておく必要があります。
工事のスケジュールは業者の繁忙期や資材の納期にも左右されるため、早めに相談して計画を立てることが重要です。
高齢者の自宅介護が必要ならバリアフリーリフォームがおすすめ!
バリアフリーリフォームにより、転倒事故のリスクを低減できれば、介護する側とされる側の両方が安心して暮らせます。
また、介護保険や自治体の補助金制度を活用すれば、費用を抑えながら快適な在宅介護環境を整えることが可能です。
専門知識を持つ施工業者とケアマネージャーが協働することで、利用者の状況に合わせた最適な住環境を作り上げられます。
将来を見据えた計画的なバリアフリーリフォームで、長く安心して暮らせる住まいを手に入れましょう。