ホームインスペクションは必要ない?費用相場や失敗事例、新築・中古住宅で後悔しないための依頼方法を紹介

ホームインスペクションは必要ない?費用相場や失敗事例、新築・中古住宅で後悔しないための依頼方法を紹介

「中古住宅を買うときに欠陥が心配…」

「ホームインスペクションは本当に必要なの?」

「ホームインスペクションの費用相場や依頼方法は?」

 

国土交通省が発表した令和3年のアンケート調査では、戸建て住宅のインスペクション実施率は37.5%でした。一方、海外では日本よりインスペクションが一般的になっています。

 

そこで本記事では、ホームインスペクションとは何か、費用相場や失敗事例、新築・中古での依頼方法を解説します。また、よくある質問や後悔しない活用法も紹介するため、ぜひ最後までご覧ください。

 

参照:改正宅地建物取引業法の施行状況及び今後の見直しの方向性について|国土交通省

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ホームインスペクションとは?

ホームインスペクションは、住宅の劣化状況や欠陥の有無を専門知識を持つ第三者が客観的に調査する制度です。構造部分から設備機器まで、目視や簡易測定器を使用して建物全体をチェックし、現在の状態を報告書として提供します。

ホームインスペクションの調査内容

調査内容は、主に構造耐力上の安全性、雨漏りの有無、給排水管の状況の3つの分野に分かれます。基礎のひび割れや外壁の劣化、屋根材の損傷状況を目視で確認し、床の傾きや建具の動作不良もチェックします。

 

給排水設備では、配管の漏水や詰まり、水圧の確認を行います。電気設備についても、分電盤の状態やコンセントの動作確認を実施し、住宅全体の安全性を総合的に評価します

ホームインスペクションの目的

ホームインスペクションの目的は、購入する住宅に潜むリスクを回避すること、将来の維持管理費用を把握することです。建物の状態を正確に知ることで、想定外の修繕費用を防ぎ、適正な価格での取引が可能になります。

 

また、売主と買主の間でトラブルが発生することを未然に防ぎ、透明性の高い不動産取引を実現します。既存住宅の流通促進という国の政策目標達成にも貢献しています。

ホームインスペクションの実施率

国土交通省が実施した令和3年のアンケート調査で、戸建て住宅のインスペクション実施率は37.5%です

中古住宅の流通が盛んな欧米諸国では70~90%の実施率であることと比較すると、日本での普及は遅れているのが現状です。しかし、住宅購入者の関心は年々高まっており、今後の普及拡大が期待されています。

売主買主どちらが費用を負担するのか

費用負担については、売主・買主のどちらが負担しても問題ありません。ホームインスペクションを依頼した側が負担することが一般的です。売主が実施する場合は物件の品質保証として付加価値を高める効果があり、買主が実施する場合は購入判断の材料として活用できます。

 

近年は買主が費用負担するケースが増えており、購入申込後から契約前のタイミングで実施するのが一般的です。不動産会社によっては仲介手数料に含めてサービス提供している場合もあります。

ホームインスペクションの費用相場

ホームインスペクションの費用は、物件の種類と調査内容によって大きく異なります。一般的には新築住宅よりも中古住宅の方が調査項目が多いため費用が高くなる傾向があります。

また、延床面積が大きいほど調査時間が長くなるため、費用も比例して高くなります。

 

物件種別 基本調査費用 詳細調査費用 主な調査内容
新築戸建て 4万円~7万円 8万円~12万円 施工不良、仕上げ確認
中古戸建て 5万円~10万円 10万円~15万円 劣化状況、設備動作確認
中古マンション 3万円~6万円 6万円~10万円 専有部分、設備機器点検

(※延床面積120㎡程度の標準的な住宅での目安費用です。)

 

基本調査は目視中心の調査で、詳細調査は破壊検査や特殊機器を使用した精密な調査となります。調査範囲が広がるほど費用は増加するため、予算と必要性を考慮して調査内容を決定することが重要です。

ホームインスペクションを利用した方がよい物件の特徴

すべての住宅でホームインスペクションが必要というわけではありません。しかし、特定の条件に当てはまる物件では実施することで大きなメリットが得られます。

1.築年数が古い中古住宅

築20年以上の住宅では、主要構造部分や設備機器に劣化が進んでいる可能性が高くなります。とくに築30年を超える物件では、給排水管の交換時期を迎えており、大規模な修繕工事が必要になる場合があります。

 

また、外壁塗装や屋根材の交換、断熱材の劣化など、外観からは判断できない問題も多く存在するため、専門家による詳細な調査が不可欠です。購入後の想定外の出費を防ぐためにも、築年数の古い物件では必須の調査といえます

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2.建物の劣化状況が不明確な物件

外観上で雨漏りの痕跡や外壁のひび割れ、基礎の沈下などが確認できる物件は要注意です。これらの症状は建物の構造的な問題を示している可能性があり、表面的な補修だけでは根本的な解決にならない場合があります。

 

また、リフォーム済みの物件でも、表面的な改修により問題が隠されている可能性があるため、専門的な調査により真の状態を把握することが重要です。

3.過去の修繕履歴が不明な物件

適切な時期に必要な修繕工事が実施されているかどうかは、建物の耐久性に大きく影響します。修繕履歴が不明確な物件では、重要な箇所の劣化が進行している可能性があります

 

とくに防水工事や給排水管の交換、シロアリ対策などの履歴が不明な場合は、現在の状態を正確に把握しておきましょう。ホームインスペクションで、今後必要な修繕工事とその時期を予測することができます

ホームインスペクションを依頼せずに後悔した失敗事例

ホームインスペクションを実施しなかったことで、多くの住宅購入者が想定外の出費や問題に直面しています。ここからは具体的な失敗事例について紹介します。

1.引き渡し後に基礎のひび割れが発覚

基礎に構造的な問題がある「ひび割れ(クラック)」が複数発見されると、100万円以上の修繕費用が必要となる場合があります。新築住宅でも、コンクリートの乾燥収縮や温度変化、不同沈下や地震による歪み、施工不良などが原因で基礎にひび割れがある恐れがあります

 

一方で、事前にホームインスペクションを実施していれば、購入前に基礎の状態を把握でき、適正な価格交渉や購入の見直しが可能です。

2.排水管の漏水修繕費が予想以上に高額に

マンションの給排水管は耐用年数を超えると、漏水や腐食により交換が必要になるケースがあります。専有部分だけでなく共用部分との接続部まで修繕が及ぶと、費用は80万円以上になることもあります

 

さらに、漏水による階下への損害賠償リスクも想定されます。購入前にホームインスペクションで配管の劣化を確認すれば、修繕費用を価格交渉に反映させることが可能です。

3.契約不適合責任が免責で自己負担に

中古住宅では、雨漏りや防水不良が見つかると修繕費用が100万円を超える場合があります。契約不適合責任が免責されている取引では、買主が全額負担することになり、ローン以外の追加資金が必要になります

 

事前にホームインスペクションを実施して、雨漏りの可能性を把握することで、契約条件の見直しや価格交渉につなげられます。

4.既存住宅状況調査で発覚しない欠陥があった

既存住宅状況調査(既存住宅インスペクション)は目視中心のため、床下や壁内の詳細までは確認できません。たとえば、シロアリ被害は見落とされやすく、駆除と修復に60万円以上かかるケースもあります。

一方で、より詳細なホームインスペクションを依頼すれば、専門的な機材調査でシロアリ被害を事前に発見できる可能性があります。

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ホームインスペクションを依頼して後悔した失敗事例

一方で、ホームインスペクションを実施したものの、期待した結果が得られなかったり、思わぬトラブルに発展したりする事例も存在します。

1.ホームインスペクターの経験や知識が浅かった

格安料金のインスペクターに依頼すると、経験不足から重要な不具合を見落とすリスクがあります。

たとえば、入居後に設備故障や外壁劣化が発覚すれば、数十万円以上の修繕費が発生する可能性もあります。料金だけで判断せず、資格や実績を十分に確認することが重要です

2.欠陥が見つからず費用が無駄に感じた

比較的新しい住宅では、調査で問題が発見されないこともあります。その結果、支払った費用が「無駄だった」と感じる場合もあります。

しかし、問題が見つからなかったこと自体が安心材料となり、保険料のような意味合いを持つと理解しておくことが大切です。

3.仲介・施工業者や売主との関係が悪化した

インスペクションで施工不良を指摘した結果、売主や施工業者との関係が悪化し、修繕交渉が難航するケースがあります。場合によっては契約解消や引き渡し遅延につながることもあります。

実施前に売主や仲介業者へインスペクションを実施する意向を伝え、協力体制を確認しておくことが望ましいです。

4.契約前に依頼すべきだった

売買契約後にインスペクションを実施した場合、基礎の沈下や配管の劣化など重大な欠陥が見つかっても、契約条件の見直しや価格交渉は難しくなります

その結果、修繕費が予定を大きく超過し、追加融資が必要になるリスクもあります。契約前に依頼することで、交渉の余地を確保することが可能です。

ホームインスペクションで後悔しないための依頼方法

失敗事例を踏まえ、ホームインスペクションを効果的に活用するためには、適切な実施タイミングと信頼できる調査機関の選定が重要です。以下のポイントを押さえることで、後悔のないホームインスペクションが実現できます。

1.申し込み後から契約前のタイミングで依頼する

ホームインスペクションの最適な実施タイミングは、購入申込後から売買契約締結前の期間です。この時期であれば調査結果を購入判断や価格交渉に活用でき、問題が発覚した場合は契約条件の見直しや購入の中止も可能です。

 

申込前では売主の協力が得にくく、契約後では交渉の余地が限定されてしまいます。購入申込時にホームインスペクション実施の条件を含めることで、売主の理解を得やすくなり、スムーズな調査実施が可能になります。

2.診断項目や調査範囲を事前に確認する

調査会社により診断項目や調査範囲が異なるため、契約前に詳細な内容を確認することが重要です。基本調査に含まれる項目、オプション調査の内容、調査時間の目安、報告書のサンプルなどを事前に確認しましょう。

 

とくに気になる箇所がある場合は、重点的に調査してもらえるか相談することも大切です。床下や屋根裏の調査が含まれているか、設備機器の動作確認の範囲なども具体的に確認しておくと安心です。

3.第三者機関に調査を依頼する

中立性と客観性を確保するため、売主や仲介会社とは独立した第三者機関に調査を依頼することが重要です。日本ホームインスペクターズ協会の会員や建築士の資格を持つ専門家など、適切な技術と知識を有する機関を選択しましょう。

 

調査会社の実績や資格、保険加入状況なども確認ポイントです。複数の会社から見積もりを取り、調査内容と費用のバランスを比較検討することで、適切な選択が可能になります。

4.新築住宅は建築中の調査が効果抜群

新築住宅の場合は、完成前の建築中に調査を実施することで高い効果が得られます。基礎工事完了時、構造躯体完成時、内装工事開始前など、複数回に分けて実施することで、隠蔽される前の重要部分を確認できます。

 

完成後では確認困難な断熱材の施工状況や配線・配管の状況なども詳細にチェック可能です。建築中の調査により発見された施工不良は、完成前に修正が容易で、建物の品質向上に大きく貢献します

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ホームインスペクションに関するよくある質問

ここからは、実際の取引現場でよく寄せられる質問とその回答を紹介します。これらの疑問を事前に解消しておくことで、スムーズなホームインスペクションの実施が可能です。

売主がホームインスペクションを拒否する理由は?

売主がホームインスペクションを拒否する主な理由は、建物の欠陥や不具合が発覚することへの不安です。問題が見つかった場合、修繕費用の負担や売却価格の下落、契約破談のリスクがあるためです。

 

また、調査による建物への立ち入りや調査時間の確保が負担に感じる場合もあります。

しかし、近年は売主自ら調査を実施して物件の品質を明示することで、差別化を図るケースも増えています。買主としては、調査の目的と効果を丁寧に説明し、理解を求めることが重要です。

建売住宅を購入するときもホームインスペクションは必要?

新築の建売住宅でも、ホームインスペクションの実施には大きなメリットがあります。建築中の検査や完成検査では発見できない施工不良や仕上げの問題を専門家の視点で確認できます。

 

とくに大量供給される建売住宅では、工期短縮のプレッシャーにより施工が雑になる可能性もあります

購入前に第三者による客観的な調査を実施することで、引き渡し後のトラブルを防止し、安心して居住を開始できます。保証期間内に不具合を発見できれば、無償での修繕も可能です

何年ごとにホームインスペクションを利用するべき?

住宅金融支援機構の点検ガイドでは、築10年ごとの定期点検が推奨されています。新築から10年、20年、30年のタイミングで実施することで、建物の経年劣化を適切に把握し、必要な修繕工事を計画的に実施できます。

 

ただし、台風や地震などの自然災害後や、雨漏りなどの不具合が発生した際には、築年数に関係なく専門家による調査を受けることが重要です。定期的な点検により、建物の資産価値維持と安全性確保が可能になります。

多くの方にとってホームインスペクションは必要!

ホームインスペクションは、購入する住宅に潜む欠陥を早期に対処するのにとても有効です。多くの方にとって必要性の高いサービスと言えるでしょう。とくに中古住宅においては、建物の状態を客観的に把握し、将来の修繕費用を予測することで、適正な購入判断が可能になります

 

専門家による調査で発見される問題は、一般の方では気づくことが困難なものが多く、早期発見により大きな修繕費用を避けることができます。契約前の適切なタイミングでの実施により、価格交渉や契約条件の見直しも可能となり、より安心できる住宅購入が実現できるでしょう

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